隠れたカリキュラムとは、教育する側が意図する・しないに関わらず、学校における制度や慣行、教員の言葉や態度などを通して、学校のフォーマルなカリキュラムの中にはない、知識、行動の様式や性向、意識やメンタリティが、教師や仲間の生徒たちから学び取られるものを指します。
「隠れたカリキュラム」という言葉は、教育学者フィリップ・W・ジャクソン (Philip W. Jackson)が、造語として使ったのが最初だと言われています。教育学・教育社会学の分野でよく用いられ、「潜在的カリキュラム」と表現される場合もあります。
今回は、隠れたカリキュラムについて、ジェンダー意識を作り上げていく学校教育の例を挙げながら、解説し、まとめています。
目次
1. 男女による明確な進路の違い
2. 20年前までは男女で授業が違った
3. 男女で分けられる色や順番
4. 教育管理職者の男女比率の違い
1. 男女による明確な進路の違い
小学校や中学校では、男女が同じカリキュラムで授業を受けているにも関わらず、高校以降の進路や進学率に大きな違いがあります。
例えば、高校の場合は進学率がほぼ同じですが、商業・看護・家庭に関する学科では女子の割合が高く、工業に関する学科では男子が多いという傾向があります。
また、文部科学省の調査によると、2015年の男女別大学進学率は、男子が55.4%、女子が47.4%と、これもまた男女による差があることが見られます。もちろん、大学での専攻分野でも、男女差による隔たりがあります。
一見平等にみえる学校教育の場ですが、このような男女による進路の差が示しているのは、学校が性差別意識を生み出す場となっているということです。表面的には差別のない学校ですが、差別を生み出す見えない仕掛け、それが「隠れたカリキュラム」です。
2. 20年前までは男女で授業が違った
上記のように、隠れたカリキュラムにより、男女差別意識が生み出されることがわかりましたが、実は20年前までは、明らかな性差別がありました。
現在では、男女同じ授業を受けますが、中学校では女子は家庭科、男子は技術、高校では女子は家庭科、男子は体育、というカリキュラムでした。
これでは明らかに男女差別意識が生まれ、女性は家事や育児を担当するものという意識が刷り込まれてしまい、女性の社会進出には程遠い社会が描かれてしまいます。
しかし、これに関しては、1979年に国連が女性差別撤廃条約を採択し、その後日本政府が同条約を同意するに至り、この男女別カリキュラムはなくなっていきました。
3. 男女で分けられる色や順番
男女別カリキュラムは撤廃されたとしても、隠れたカリキュラムにより、男女差別意識は生まれます。
例えば、男女別の名簿やさまざまな男女による色分けにより、男女は全く違うもので、違うカテゴリーなんだと、生徒は無意識のうちに刷り込まれていきます。
他には、さまざまな順番において、男子がいつも先であると、男子は優先されて当然だという刷り込みも受けるかもしれません。
4. 教育管理職者の男女比率の違い
他には、教育する側、教師の体制や教育者の潜在的な意識が、男女差別意識が生み出されている可能性も示唆できます。
例えば、学年主任や校長先生などの教育管理職者の割合に女性が少ないことや、幼稚園から大学へと上がっていくにつれて、女性の割合が減っていくことも影響を持っています。
生徒たちは、この男女差の実態を見ることにより、管理職、つまり組織のリーダーは男性が向いている、研究者には男性が向いているなどの意識が植えられる可能性があります。
また、教師自身がジェンダー差別意識を持っていて、その意識のもとで教育に携わることで、男女差別意識が助長される可能性があります。
なぜなら、教師自身が現在より色濃い男女差別意識の強い教育のもとで、育ってきた背景を持っているからです。
このように、隠れたカリキュラムによる男女差別意識は非常に深刻です。何が子どもたちに影響を与えているかをしっかりと理解し、教師や教育体制の見直しが重要だと考えられます。