福祉レジームとは、デンマーク出身の社会・政治学者イエスタ・エスピン=アンデルセンが唱えた概念で、福祉の生産が、市場、国家、家族間でどのように配分されているのかに注目しています。
今回は、福祉レジームの三類型、自由主義、保守主義、社会民主主義の3つをわかりやすく解説し、まとめています。
目次
1. 自由主義レジーム
2. 保守主義レジーム
3. 社会民主主義レジーム
1. 自由主義レジーム
自由主義的な福祉レジームとは、アメリカをはじめとするアングロ・サクソンの国々で多くみられ、小さな国家、リスクの個人責任、市場中心の問題解決に向けた政治的取り組みが大きな特徴です。
自由主義では、国家による福祉サービスの提供は、極めて限定的で残余的なものです。多くの福祉サービスの提供は資力調査や所得調査を伴い、対象者を限定とした公的扶助に大きく偏ってます。
この場合、福祉サービスの市場への依存の度合いが高くなり、結果として経済力による格差が生じてしまいます。
簡単に言い換えると、「国はあまり干渉しないので、自分たちでなんとかやってくれ、もし何か不具合があったら、その時だけ助けるよ」と言い換えることができます。
2. 保守主義レジーム
保守主義レジームとは、日本やドイツなどの南欧諸国などの国で多く見られ、職域別に分割された社会保険制度と家族主義が大きな特徴です。
保守主義では、貢献原則に基づく社会保険制度が、職能別に編成され、労働者の雇用関係やどのような産業、企業で働くかで、加入する保険制度が異なります。
家族主義は、夫が外で賃労働に従事し、妻が家庭でケア労働に従事するという性別役割分業に基づく家族を、標準的な家族とした上で、一家の稼ぎである男性に偏った社会的保護を提供します。
簡単に言い換えると、「伝統的な影響を強く受けていて、職種やよって福祉サービスの種類が異なり、また家族構成によっても、受ける福祉サービスが異なる」と言い換えることができます。
3. 社会民主主義レジーム
社会民主主義レジームとは、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランドといった北欧諸国にみられ、様々な福祉サービスの提供が普遍主義的に行われ、福祉サービスを受給する資格や権利が、認定されたニードや雇用関係ではなく、シティズンシップに基づいてなされています。
社会民主主義は、自由主義と対照的に、国家が福祉サービスを提供する重要な主体とされ、福祉の市場への依存から脱却が図られ、平等主義が追求される点に特徴があります。
その結果として、経済的状況に関わらず、その社会を構成する市民は、誰もが同じ権利を持ち、同じ給付を受けます。
簡単に言い換えると、「市民権として、全員が福祉サービスを受ける権利があるので、国家が主体となって福祉サービスを提供しますが、その分、市民の税金は多く払って、支えていきまましょうね」と言い換えることができます。