社会学、特に文化人類学を学問していると必ず登場するのが、マルセル・モース「贈与論」です。モースは贈与論において、贈与の仕組みと、贈与によって社会制度を活性化させる方法を論じているのですが、正直理解しがたい部分も多いです。
その理由として、彼の研究は、太平洋や北米の未開部族や古代ローマやゲルマンの慣習についてなので、資本主義が発達した社会に生きる私たちには想像しにくいことが挙げられます。今回はこの「贈与論」を噛み砕いて、簡単にわかりやすく解説していきます。
目次
1. 贈与論とは何を研究したものなのか
2. この研究から分かったこと
3. なぜモーズは贈与論を著したのか
4. まとめ・考察
1. 贈与論とは何を研究したものなのか
1925年にフランスで、モースは「贈与論」を発行しました。そもそも贈与論とは、何を研究したものなのでしょうか。
贈与論でモースが研究した対象は、太平洋や北米の未開部族とか古代ローマやゲルマンの儀礼的な贈与でした。言い換えると、文明化されていない地域における、伝統的な物の交換についてです。
特に、どんな規則によって贈り物を受け取るとお返しをする義務が生じるのか、また、贈り物にはどんな力があって受け手にお返しをするように仕向けるのかを論じました。
2. この研究から分かったこと
モースはこの研究から何を発見することができたのでしょうか。
モースはそれぞれの異なる集団間贈与は、双方的なつながりを作って他者を受け入れることにつながり、集団間の戦いを防いでいると言います。また、贈与は自分の名誉を示すことにも役割を果たしていました。
そしてその贈与には、3つの義務があると言っている。
与える義務
与えるのを拒んだり、招待をしないのは、戦いを宣するに等しい。
受け取る義務
贈り物を受け取らなかったり、結婚によって連盟関係を取り結ばない、といったことはできない。
返礼の義務
この義務を果たさないと、権威や社会的な地位を失う。
では一体、これらの義務はどこから来るのでしょうか。
モースはその理由を、贈与するモノには霊的な力が宿っており、その霊的な力が贈与に対する返礼を義務づけていると説明しています。
ここで疑問符が付く方が多いので、解説しておくと、”贈与”と聞くとプレゼントの交換を想像するかも知れませんが、それとは全く異なります。
例を挙げるとすれば、昔流行したチェーンメールのようなもので、誰かに送らないと自分が呪われるというようなものです。
3. なぜモーズは贈与論を著したのか
モースはなぜ未開部族の文化を研究していたのでしょうか。
モースは人間が「経済的動物」になってしまったのではないかと恐れていました。資本主義の発展は人間を功利的な存在に変えつつあると言っていました。
それをなんとか改善するために、未開部族の知恵を積極的に活かして現代の社会を改善しようとしたのでした。
4. まとめ
贈与論とは一言でまとめると、以下のように言えるでしょう。