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マーク・グラノヴェッター「弱い紐帯の強み」が転職に有利な理由は?日本での調査事例も

投稿日:2019-04-22 更新日:

マーク・グラノヴェター(Mark Granovetter)は、 アメリカの社会学者で、彼が唱えた転職に関する説「弱い紐帯の強み」はとても有名です。

今回は彼をもっとも有名にさせた「転職ーネットワークとキャリアの研究」を簡単にわかりやすく要約し、まとめています。

目次

1.調査方法・目的

2.転職は弱い紐帯が重要

3.日本での事例

4.まとめ




1.調査方法・目的

マーク・グラノヴェッターは、1970年に米国ボストン郊外のニュートン市に在住の282人の男子ホワイトカラー(専門職、技術職、管理職)労働者を対象に面接法と郵送法によって行われました。

調査目的は、実際に労働者が就業情報にどのように接近し、どのように労働者と職業のマッチングが生み出されるのか、その因果関係の連鎖を追跡し、そのメカニズムを解明することでした。

 

2.転職は弱い紐帯が重要

この調査から、グラノヴェターは、転職する際に、労働者は強い紐帯を持つ(いつも会う)人よりも、弱い紐帯を持つ(まれにしか会わない)人から役に立つ就業情報を得るという傾向を見つけました。

この発見にもとづいて、グラノヴェターは「弱い紐帯の仮説」を提唱します。つまり、いつも会っている人々には、既に知られている同じ情報を共有するという社会構造的な傾向があるので、労働者は、かえって、たまに会う人から多くの新しい情報を入手する可能性があるという仮説です。

これは、強い紐帯で結ばれる人々は同じ社会圏に属し、類似した情報を持ち、逆に、弱い紐帯で結ばれる人々は異なる社会圏に属し、異なる情報を持つ傾向があるという推論に基づきます。




3.日本での事例

一方で、この「弱い紐帯の仮説」は、アメリカだけでなく、日本でも通づる説なのでしょうか。日本でも同じような調査が、社会学者の渡辺深によって行われました。

彼は、1985年から2002年までの17年間に、日本の労働市場におけるジョブ・マッチング過程がどのように変化したのかについて分析しました。

調査結果から、良い仕事をもたらす紐帯の変化として、「強い紐帯」から「弱い紐帯」への変化が観察されました。

1985年東京調査では、強い紐帯を活用すると、情報収集度が高く、現職の年収、会社帰属意識、職務満足度が高いという分析結果が得られました。

しかし、2002 年東京調査では、就職で弱い紐帯を用いると現職の職位が高く、転職で弱い紐帯を活用すると転職後の年収が増加し、規模の大きい企業に転職する傾向が見られました。このように、東京男性労働者全体において「弱い紐帯の強さ」が確認されたのでした。

 

4.まとめ

このように、「弱い紐帯(=弱いつながり)」は、アメリカでも日本でも、転職に有利に働くということがわかりました。

これらのことから、転職を考えている方は、内部だけでなく、常に外部とのつながりを意識して、または新しいコミュニティへの参加をすることが重要であると結論づけることができます。

参考論文:グラノヴェター『転職ーネットワークとキャリアの研究』

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