エンタイトルメント理論とは、インドの経済学者アマルティア・センによって提唱された考えで、飢饉は食糧不足によって惹き起こされるのではなく、食糧の配分によって惹き起こされる考え方を指します。
今回は、エンタイトルメント理論に基づいた、飢饉の起こる原因やインドでの事例をわかりやすくまとめています。
目次
- エンタイトルメントとは
- 飢饉が起こる原因
- インドでの事例
- 経済学者センの影響力
エンタイトルメントとは
食糧が絶対的に不足するということは、ほとんど起こりません。食糧供給に関して起こりがちなのは、食糧を1番必要としている人々のところに届かないことです。
インドの経済学者センは、個人が手に入れて当然の一定量の財とサービスを「エンタイトルメント」と呼びました。
飢饉が起こる原因
このエンタイトルメントは、生産される食糧の総量以外のものに左右されます。現代の交換を土台としている経済では、自分の食べる食糧を生産している人はほとんどいません。
人々は、自らの労働と引き換えにお金を手に入れ、そのお金で食糧と交換し、手に入れています。そのため、個人が生活していくのに必要なだけの食糧が有るかどうかは、その個人が食糧の価格と比べてどれだけ売り買いできるかに左右されます。
つまり、飢饉が生じるのは、その個人のエンタイトルメントが生き残るのに不可欠な最低限の量を下回るときなのです。食糧の値段が上がったり、賃金が下がったりすると、簡単に生じてしまいます。
インドでの事例
経済学者センは、1943年のベンガル(インド)飢饉を分析しました。その結果、飢饉が起きた年の食物生産の総量は、飢饉の始まる1年前よりも低かったですが、飢饉と無関係であったそれ以前の3年間と比較すると上回っていたことがわかりました。
センによると、飢饉の主要原因は、インフレに煽られて上昇したカルカッタの食糧価格に、農場労働者の賃金がついていけなかったと結論づけられています。
経済学者センの影響力
センは、これらを踏まえて、民主主義の国であれば、最悪の飢饉が起こらないようにできると主張しています。
このセンの飢饉に対する画期的な手法は、飢饉に対する思い込みとアプローチを一転させるものだとして、知られています。
センの実績として、1988年にノーベル経済学賞を受賞しており、2004年からはハーバード大学で、経済学と哲学の教授を務めています。