「自我(ego)」「自己(self)」はどちらも「私」のあり方を捉えるための考え方ですが、両者の意味は重なる部分もありますが、完全に一致しているとは言えません。
今回は、こちらの2つの社会学的概念について、出来るだけわかりやすく解説しています。
自我とは
「自我」とは、欲望を追求しようとする心の中の衝動と、規範に従う厳格さとの間でバランスをとるものとされています。
つまり、「自我」とは、自分自身の心の動きを統合するような働きを持つものと言い換えることができます。
また、精神分析家エリクソン(Erikson)が考案し、現在の日本でも多く使われるようになった「アイデンティティ」という言葉ですが、正確に言うと「自我アイデンティティ」を指します。
しかし、実際のところ、社会学では、「自我」という概念よりも、「自己」という概念の方が多く使われます。
自己とは
社会学者ミードは、「自己」には2つの意味があると主張しています。
1つ目は、「自己とは他者との関係である」というものです。言い換えると、自己は様々な他人との関わりの中で形成されていくもの、と言うことができます。
つまり、自己が何者であるかという質問に対しての回答は、他人に言及しなければ与えることができないということです。
2つ目は、「自己とは自分自身との関係である」というものです。言い換えると、自己の持っている性質が、それ自身に言及し、また働きかけるもの、と言うことができます。
これらのことをまとめると、「自己」は、他人との関係において自分を見る他人の視点によって形成されるものだと言うことができます。