サードプレイスとは、アメリカの都市社会学者レイ・オルデンバーグが提唱した言葉で、コミュニティにおいて、自宅や職場とは違った、心地のよい居場所のことを指します。
具体的な場所としては、その国の文化によって異なりますが、フランスではカフェ、イギリスではパブ、イタリアではエスプレッソバーが挙げられます。
レイ・オルデンバーグは、西フロリダ大学社会学部名誉教授でもあり、州立マンケート大学で英語と社会科の学士号、ミネソタ大学で社会学の修士号および博士号を取得しています。
今回は、「サードプレイス」という言葉が生まれた背景、その言葉を条件付ける特徴、そして「サードプレイス」が人々に与える効果を明らかにしていきます。
目次
1.サードプレイスが生まれた背景
2.サードプレイスの条件・特徴
3.サードプレイスがもたらす効果
1.サードプレイスが生まれた背景
サードプレイスという言葉に対して、ファーストプレイス(first place)、セカンドプレイス(second place)という言葉があります。
ファーストプレイスの意味
「自宅で生活を営む場所」を指します。
セカンドプレイスの意味
「職場や学校など、自宅以外で長い時間過ごす場所」を指します。
ファーストプレイスでも、セカンドプレイスでもない、「サードプレイス」が必要となった背景を、オルデンバーグは、アメリカ社会を例に挙げています。
19世紀に入ってから、アメリカは自動車依存型の都市社会に変化し、家庭(ファーストプレイス)と職場(セカンドプレイス)を往復するだけの状態になっていたのです。
それはつまり、かつてまちの中に庶民が自由に集まって議論を交わす場があったものが、なくなってきていることを指し、そういったコミュニティの喪失は、ストレス蓄積に影響を与えます。
オルデンバーグは、このようなストレス溜まりやすい現代社会を生き抜くには、潤滑油の役割を果たす場所が必要だと考えました。それがサードプレイスでした。
2.サードプレイスの条件・特徴
オルデンバーグが定義する「サード・プレイス」には、8つの条件・特徴があります。1つずつ見ていきましょう。
中立領域
個人が義務感を感じることなく、また、経済的、政治的、法的に縛られることなく、思いのまま出入りができ、全員が心地良くくつろぐことができる中立地帯としてある
平等主義
経済的・社会的地位に関係なく、会員等アクセスに制限がなく、あまねく人々が入ることができる
会話が主たる活動
会話が楽しく、活気で満ちている
アクセスしやすさと設備
アクセスがしやすく、誰もが訪れやすい環境である
常連・会員
常連がいて、その場の空間やトーンを作り、彼らが新たな訪問者を惹きつけ、受け容れ、いつも心地良い空気をつくる
控えめな態度・姿勢
日常に溶け込む簡素なデザインで、無駄遣いや派手さはなく、万人に受け入れられるものである
機嫌がよくなる
緊張や憎悪は生まず、明るく遊び場的な雰囲気を持っている
第2の家
サードプレイスの人たちは、この場所に根ざしている感情を持ち、同じ家に暮らすもの同士のような感覚を持つ
3.サードプレイスがもたらす効果
個人がサードプレイスを持つことによって、参加するコミュニティが増え、結果的に個人に対して、大きなメリットを与えます。
例えば、コミュニティは、知識の広がりを与えたり、承認欲求の充足を促したり、個人として肯定感が増したりするメリットをもたらします。
しかしながら、日本の現代社会において、企業に勤める方のほとんどの方が、企業外にコミュニティを持っておらず、退職時に、全てのコミュニティを失う恐れがあります。
つまり、今後、サードプレイスの役割は、さらに重要になっていき、コミュニティ形成の一翼を担うこととなっていくでしょう。