最近ニュース等でよく取り上げられているカスハラ(カスタマーハラスメント)。そのカスハラの実態は、近年にかけてひどエスカレートしています。
例えば飲食店では「まずかったから返金しろ」だとか、タクシー運転手には「踏切で止まるな、早く行け」などが多いそうです。
今回は、そのカスハラが増加している社会的背景について、4つご紹介します。
目次
1.”お客様は神様です”(三波春夫)の誤解
2.おもてなし文化への過度な期待
3.格差の広がりへの怒りの拠り所
4.社会のつながりの欠如
1.”お客様は神様です”(三波春夫)の誤解
飲食店などのサービス業に従事したことがある方は、研修の際に一度は聞いたことがないだろうか。
「お客様は神様です」
確かにそのサービスにお金を払い、飲食店を存続させているのは顧客であるが、実際は神様なんかではない。
逆の立場から考えてみると、顧客は、飲食店などのサービスを提供する側がいなければ、サービスを受けることができない。つまり、それぞれ持ちつ持たれつの平等な関係なのである。
しかし、三波春夫のライブでよく言われる「お客様は神様です」という言葉が社会に浸透し、お客様をまるで神様のように扱うようになってしまった。
三波春夫は実際、そのような意味で言っていないと、発言の誤解を懸念している。オフィシャルサイトでは以下のように説明している。
『歌う時に私は、あたかも神前で祈るときのように、雑念を払って澄み切った心にならなければ完璧な藝をお見せすることはできないと思っております。
ですから、お客様を神様とみて、歌を唄うのです。また、演者にとってお客様を歓ばせるということは絶対条件です。
だからお客様は絶対者、神様なのです』
(三波春夫オフィシャルサイト)
2.おもてなし文化への過度な期待
東京オリンピック誘致の際に、滝川クリステルの演説内で、「お・も・て・な・し」というフレーズはまだ記憶に新しい。日本は海外旅行者に驚かれるほどの、おもてなし大国である。
しかし、このおもてなしが“普通”となってしまい、さらにより良いサービスを求めるようになってしまった。
さらに、店側の方も、都市部ではサービス店同士の競争も激しく、より良いサービスを提供することでライバル店との差をつけようとした。
それによりだんだんと良いサービスのハードルが高くなり、一般的なサービスの店舗でも、サービスに不満を抱くことが多くなったと考えられる。
3.格差の広がりへの怒りの拠り所
戦後初期に比べて、日本の経済格差が広がってきているのは言うまでもない。その格差拡大により、日本社会に対して不満や憤りを抱く人が増えたと考えられる。
この不満をぶつける場所が、お店のスタッフになったことにより、いわゆるカスタマーハラスメントの増加に繋がっている。
ツイッターなどのSNSで、誹謗中傷が多いのも同じような傾向があるだろう。
4.社会のつながりの欠如
これが最も大きな要因であり、これから日本社会にさまざまな悪影響を及ぼしていく。
社会のつながりというと、田舎などの地域コミュニティが代表的で、地域の住民全体で、地域を創っていくというものである。
しかし、都市が発達していくにつれて、そのつながりは無くなっていき、それぞれの個人が孤立して生活するようになった。ここで、人々の行動にどのような違いが出てくるかというと、
地域コミュニティの場合
自分の行動は地域の形成に影響するという考えが、根底にある。また、自分が悪事をすると、それが回り回って自分に返ってくる可能性が大いにあるのである。
そのため、人々は良心的な心を持って、人々に接し、結果的に地域全体がプラスになるのである。
都市部の場合
人々と地域のつながりはほとんどない。そのため、自分が地域のために何かしようとか、そういった行動も生まれない。
また、地域から孤立しているために、自分が何をしようと、回り回って自分が不利益を被るなどという考え方もしないのである。
社会のつながりがないというのは、一種の自由の獲得とも言えるが、それが地域への悪影響を及ぼしているのはカスハラの例を1つ取っても明らかである。