疑似イベントとは、アメリカの社会・歴史学者ダニエル・J・ブーアスティンの造語で、マスメディアの発達によって、さまざまな現実の事件や出来事が起こり、それが報道されていくのではなく、メディアによる報道の方が事件や出来事の社会的なありようを決定するような出来事を指します。
この疑似イベントについて、観光の観点から解説し、その批判も含めてまとめています。
目次
1. イメージを確認する旅行
2. 疑似イベントに対する批判
1. イメージを確認する旅行
マスメディアによって、疑似イベント化された社会では、旅行者は、実際の旅行先によってイメージを確かめるのではなく、イメージによって実際の旅行先を確かめるために旅行します。
なぜなら、旅行はガイドや雑誌、テレビからの情報によって、人々はすでに旅行先についてのイメージを持っていて、それをアリバイ的に確認するために旅に出かけるからです。
このとき、観光地側でもそうしたメディアのイメージにあわせて土地の風景を変えていくという反転した状況が起こります。
このような倒錯した関係が、広告や都市、政治的事件から有名人までのさまざまな社会領域で同時に生じているとブーアスティンは批判しました。
2. 疑似イベントに対する批判
この疑似イベントの主張に対して批判したのが、フランスの社会学者であるディーン・マッカネルです。
ブーアスティンの疑似イベントの主張は、観光とは旅先でメディアによって作られたものをを楽しむことであり、旅行者達はそのように本物から隔離された中で旅行するというものでした。
それに対してマッカネルは、どの旅行者にも本物志向があり、彼らは他人の本物の生活の中に独自の魅惑を感じ、これが自分自身の経験の中では味わえないような現実味を持つのであると主張しています。
それは、言い換えると、ツーリストは、自分の日常生活から離れた別の「時」と別の「場」に本物を求める一種の現代の巡礼をしているのだと主張しています。