マクドナルド化する社会とは、アメリカの社会学者ジョージ・リッツァの著書で、マクドナルドを例に挙げ、社会全体が合理性を追求していき、合理性だけが最終目的になってしまったとき、脱人間化という非合理的なことが起こってくることを指摘したものです。
これは、マックス・ウェーバーの著書「鉄の檻」を参照しており、20世紀後半の社会状況に照らし合わせています。
今回は、このマクドナル化する社会に挙げられる4つの合理性と、そこから不可避的に発生する非合理性についてまとめています。
目次
1. 効率性
2. 計算可能性
3. 予測可能性
4. 制御
5. 脱人間化による非合理性
1. 効率性
ここで言う効率性とは、「目標に対して最良の手段を追求すること」という意味で使われています。
マクドナルドは生産過程を簡素化し、商品の単純化を図ることによって、消費者の空腹を満腹にする目標に対して、最良の手段を追求しました。
例えば、マクドナルドでは、調理方法がマニュアル化されていたり、車を降りなくても注文できるドライブスルーを取り入れたり、商品の種類を限定して、客が選択する手間を省きました。
また、マクドナルドは、お客に働かせることにより、効率化をさらに実現させました。お客は注文するためにカウンターまで行き、席の確保やゴミの処分も客自身で行わせることにより、効率化したのです。
2. 計算可能性
マクドナルド化した社会では、販売される商品の量、また商品を手にするまでにかかる時間を計算できることを重視します。
例えば「ビッグ」や「ダブル」などの言葉を用い、質よりも量によってその商品の価値が計算し、値打ちのある消費をしたと思い込ませます。
これと同時に、商品を作る従業員も、質にこだわるより、いかに早く多くの量の商品を生産できるかを重視しています。
3. 予測可能性
消費者にとってマクドナルドの商品及びサービスはどの店舗でも均一であり、予測可能であることです。また従業員も予測可能であるマニュアル化された業務やサービスを行うことを義務付けられています。
お客はどのようなサービスを受けられるかあらかじめ予測できるものに対しては、安心して享受しようとする傾向があります。
従業員側から見ても、仕事が楽になり、迷いなく効率的に作業できます。実際、予測可能で繰り返しの多い作業を好む店員も多いのです。
4. 制御
商品を手に入れるために並ぶ行列、選択の余地のないメニュー、座り心地の悪い椅子、客自身が後片付けをすることなど消費者に対しての制御がされています。
また、従業員には厳密なマニュアルがあり、教えられた通り正確に、ごく限られた業務をするように訓練されています。
5. 脱人間化による非合理性
これらの4つの特徴により、すばらしく効率化がもたらされますが、それを実行する従業員にもたらされるのは脱技能化、 非人間化、そして機械化と言えます。
簡単に言うと、人間なのに機械のような存在になってしまうのです。これがいわゆるマクドナルド化する社会、官僚制の逆機能に当たる問題と言えるのです。
マクドナルド化が進めば、人々は活気を失い、自ら考えることをやめ、機械のように手順通りに動くことしかできない人間が増えて行きます。そして、一度そうなった人間は、特殊なスキルや高度な知識も持たないので、取り替え可能な存在になってしまうのです。
また、脱人間化という面では、ファーストフードレストランでは、食べ物を詰め込む場所になってしまい、食事から得られる喜びは小さくなってしまいます。
効率よく食事ができるという利点がある反面、まるで餌を与えられる家畜になったかのように感じる人もいるかもしれません。
このように、マクドナルド化する社会は、合理的である部分もあれば、非合理的な部分もあります。この現象は、ファーストフードだけでなく、教育、医療、旅行・レジャー、政治など、社会のあらゆる面に影響を与えていると考えられています。
これらのことから、マクドナルドが悪たるものとは言えませんが、人間にとって何が本当に大切なものなのか、一度考えてみる必要があるかもしれません。