「見えない巨大経済圏」は、ジャーナリストのロバート・ニューワースによって、執筆された著書で、世界中に存在するインフォーマル経済について、フィールドワークし、その実態を明らかにし、考察しています。
著者は、ブラジルのサンパウロ、パラグアイのシウダ・デル・エステ、ナイジェリアのラゴス、中国の広州で4年間に渡って、ストリートマーケットの住人たちの間に深く分け入って、取材を重ね、こちらの著書を完成させました。
無視できない巨大経済圏
インフォーマル経済(=GDPにカウントされない経済)の規模は、非常に大きく、世界中の労働者の約半数の18億人は、このカウントされない経済で生計を立てています。
その商取引の金額の合計は、全世界で10兆ドルにもおよび、仮にこれが1つの国家だとすれば、2位の中国を抜いてアメリカに次ぐ経済大国になると言えます。
このインフォーマル経済は、多くの経済学者やビジネスリーダーや政治家に無視されていますが、決して無視できない存在であると著者は述べています。
肯定的なインフォーマル経済の捉え方
インフォーマル経済と聞くと、フォーマル経済と比較してしまい、違法性の高い、撲滅すべきものであると、思う方も多いかも知れません。
しかし、「インフォーマル経済」の名付け親である、キース・ハートは、ネガティブに捉えられていることに違和感を感じていると、後に発表しています。
著者もそれに対して同感で、「インフォーマル経済」という表現はやめて、その代わりに「システムD」という愛称を使うことを提案しています。
確かに、無免許、税金逃れといった、ネガティブな面はありますが、生きるために必死の工夫と努力をしているポジティブな面も評価するべきだという主張です。
これからの解決策
著者ニューワース氏は、このインフォーマル経済に対して、無免許、脱税などの違法性を取り締まり、払拭することを目指すのではなく、納税や登記に代わる何らかの形で公的負担やガバナンスを担保する方法を考え、「フォーマル」な経済と連携できる道を探るべきだと主張しています。
その理由として、この巨大なインフォーマル経済が、世界の労働者の半数にも及ぶ人々の雇用と生活を支えており、「フォーマル」な経済では、すぐに18億人もの雇用を生むことはできないと考えるからです。
感想・レビュー
この著書は、綿密なフィールドワークによる調査によって、著されており、他では知ることのできない独自の情報が多く載ってあり、大変読み応えのある一冊でした。
発展途上国に旅行された際に、路上で商品を販売している人を見かけたことがあると思います。その時に思い浮かぶ、例えば「この人はどこから仕入れているのか」「出店許可は取っているのか」などの疑問の答えを知ることができます。
また、インフォーマル経済で生きる人々たちのつながりなども調査しており、どのような関係であれば、脱税することができるのか、ルートはどう繋がっているのか、などもわかりました。
発展途上国の経済に興味がある方は、ぜひ読んでほしい一冊です。