大阪府・堺市にある「百舌鳥・古市古墳群」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)によって、世界遺産登録がほぼ確実に決定されることとなりました。
長年、世界遺産登録に向けて、市を上げて取り組んできましたが、「百舌鳥・古市古墳群」には、さまざまな観光都市として発展するための課題があります。
立入禁止は理解されるか
百舌鳥古墳群は、大阪府堺市にある古墳群で、半壊状態のものも含めて44基の古墳がありますが、皇室の祖先をまつる天皇陵などは立ち入りが禁じられ、内部の詳細は明らかになっていません。
また、発掘は墳丘保護を目的にした範囲にとどまり、被葬者を納めた石室などの調査は行われていないのです。そのため、もちろん観光客も内部見学ができないというのが現状です。
世界遺産登録されると、これから多くの外国人観光客の増加が予想されますが、一方で、この現状を理解してくれるか疑問である。
例えば、同じ墓の世界遺産である、エジプトのピラミッドは内部見学が可能です。また、他の多くの世界遺産でも、内部見学が可能です。
このようなことから、これから古墳の内部見学の是非が議論されるかもしれません。一方で、天皇の聖域であることや、保全的観点から、反対意見が出ることも間違いありません。これは今後、難しい課題となるでしょう。
景観保全と都市開発
世界遺産登録に向け、堺、羽曳野、藤井寺の3市は古墳周辺にバッファゾーン(緩衝地帯)を設定し、建築物の高さ規制や景観規制などを強化してきました。しかし、規制前に作られた既存建物の扱いは、問題となっています。
また、堺市は80万人の人口を抱える政令指定都市であり、都市開発も活発です。そのため、景観保護と都市開発のバランスを考えることも課題の1つであると言えます。
観光客の受け入れは可能か
百舌鳥・古市古墳群の中で、最大級の大きさを誇る「大仙古墳」の最寄駅は、JR阪和線「百舌鳥駅」です。百舌鳥駅は、普通電車しか停まらず、改札機も3-4つほどしかない小さな駅です。
また、百舌鳥駅から大仙古墳へ向かう歩道は、幅が狭く、多くの人が通行することができない状況になっています。
これらのことから、インバウンドを含め、多くの観光客が増加した場合、対応しきれるかが課題の1つであると言えます。観光客受け入れに向けて、急ピッチで観光インフラを整備する必要があるでしょう。