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コーヒー豆のフェアトレードの現状と課題 -貧困と搾取の問題は解決できていない-

投稿日:2019-07-08 更新日:

近年、日本でもスターバックスコーヒーといった大手コーヒーチェーンの進出や個人経営のカフェの増加に伴って、コーヒーを口にすることが多くなってきました。

コーヒーは当然のことながら、コーヒー豆から淹れられますが、そのコーヒー豆の産地をたどってみると、発展途上国であることがほとんどです。

コーヒー豆の生産者はコーヒーの売り上げのほんの一部しか受け取っていないのが現状だと言われています。この現状を解決するべくフェアトレードという制度が導入されています。

今回は、コーヒー豆に関わる利害関係や、その改善策であるフェアトレードについて、他の研究者の議論とともにまとめています。

目次

  1. コーヒー豆の生産者の現状
  2. フェアトレードの定義と意義
  3. フェアトレードの現状と問題点



コーヒー豆の生産者の現状

インスタントコーヒーは 1kg あたり、生産者価格では1.54 ドルですが、小売りでは26.40 ドルとなっています。計算すると、生産者価格の17.1 倍で取引されています。

焙煎、インスタント加工、流通マージンを含んではいますが、それを差し引いていたとしても凄まじい儲けです。

しかし、南の国の生産者たちは、コーヒーがおいしい飲み物だということを知りません。自分たちが作ったコーヒーを飲んだこともないです。焙煎して飲むという、その飲み方さえ知りません。

朝早くから夜遅くまで、汚れた作業着でコーヒーを作るための労働しか知りません。その労働も、1 日1 ドルにも満たないのです。

ここから、生産者は劣悪な環境での労働を強いられていることがわかります。さらには、小売業者が生産者から搾取しているとも見ることができます。




フェアトレードの定義と意義

この章では、フェアトレードの定義と存在意義を見ていきます。

Fairtrade Label Japanによると、

フェアトレードとは、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指ざす、貿易のしくみをいいます。

フェアトレードは、対話、透明性、敬意を基盤とし、より公平な条件下で国際貿易を行うことを目指す貿易パートナーシップである。

特に南の弱い立場にある生産者や労働者に対し、より良い貿易条件を提供し、かつ彼らの権利を守ることにより、フェアトレードは持続可能な発展に貢献する。

フェアトレード団体は、生産者の支援、啓発活動、および従来の国際貿易のルールと慣行を変える運動に積極的に取り組む事を約束する。

このようにフェアトレードは発展途上国の生産者や労働者の生活改善を目指す貿易の仕組みだと言えます。それではなぜ、フェアトレードによって、労働者の権利が守らなければならないのでしょうか。

Fairtrade Label Japanによると、

コーヒー生産国のほとんどは、いわゆる開発途上国といわれる国々です。コーヒー豆の買取価格は、生産現場とは遠く離れたニューヨークとロンドンの国際市場で決められます。

国際市場価格は変動が激しく、ここ最近はテレビなどでも報道されているように、投機マネーなどが流入し価格が高騰しています。

しかし、マーケット動向の情報入手や市場への販売手段を持たない個々の小規模農家たちの多くは、中間業者に頼らざるを得ない状況にあり、時に生産や生活に十分な利益を得られず、不安定な生活を余儀なくされ、子どもを学校に行かせるだけの十分な利益を得られないということが起こってしまいます。

フェアトレードでは、個々の小規模農家がまとまり協働で生産者組合を作ることで、メンバー全員で生産能力を高める取組みをしたり、市場と直接つながり交渉力を身につけ組織を発展させていったり、フェアトレードの利益によって地域社会を発展させていくことができるようになります。

国際フェアトレード基準では、生産者の持続可能な生産と生活を支えるために必要な、フェアトレード最低価格が定められており、国際市場価格がどんなに下落しても、輸入業者は、フェアトレード最低価格以上を生産者組合に保証しなければいけません。

コーヒー豆の買取価格が国際市場で決められてしまうために、労働者は不安定な生活を余儀なくされてしまいます。それを改善すべく、フェアトレードがあるのです。




フェアトレードの現状と問題点

この章では、フェアトレードの現状と問題点を事例を用いながら見ていきます。

消費者はフェアトレード商品を買うことで、生産者を支援できることを期待しますが、そもそも生産者は、フェアトレードの恩恵をどのように感じているのでしょうか。メキシコの事例を挙げます。

CEPCO(オアハカ州立コーヒー製造者組合)はメキシコ南部オアハカ州のコーヒー生産者組合です。1989年に設立され、1990年代初頭にオランダの輸入業者との間でフェアトレードを開始しました。

その後スターバックスなど大手コーヒー企業からも支援を受け、現在ではメキシコを代表するフェアトレード生産者団体の1つとなっています。

しかしCEPCOに加盟する生産者の1集落で調査を行った研究者の武田によれば、農民たちはフェアトレードについて明確な知識をもっておらず、その恩恵もほとんど感じていなかったと言います。

その理由は、地元のコーヒー仲買人の買い取り価格が、フェアトレードのそれと競合しており、農民からすればどちらに売っても大差がないためです。

またCEPCOが「遠い存在」であることも一因です。この集落は他の17集落とともに1つの生産者組合に所属しており、その組合はCEPCO傘下の33組合の1つにすぎません。

こうした事情から、フェアトレードの恩恵のひとつである貿易相手からの報奨金は彼らには届いていないのです。

日本の消費者がフェアトレードのコーヒー豆を買うことによって、労働者に恩恵がもたらされるといった単純な構造ではないとわかります。

上記の事例のように、労働者はフェアトレードの恩恵のひとつである貿易相手からの報奨金を受けっていません。これは明らかにフェアトレードが目的通りに機能していないと言えます。

参考文献
Fairtrade Label Japan HP
鈴木紀 「フェアトレードを可視化する」
清田和之「コーヒーを通して見たフェアトレード スリランカ山岳地帯を行く」

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